処理・システム 走時表 震源時刻 緯度・経度 深さ M 震源カタログ・ファイル 検知能力関係
-1884             理科年表(2001年版)被害地震の表  
1885-1925             宇津カタログ  
1926-1950 全地震験測 市川・望月+LL(深さ600kmまで) 1分 1分 10km毎 坪井、勝又 別冊6号で併記された旧震源は65コラム目(80レコード形式では50コラム目)に「C」,「D」,「W」の文字 S-P =<16sec(?)のみ決定。 全地震験測
1951-1960 0.1秒 参考(1959:IBM704導入)
1961 IBM704 和達・鷺坂ら 20km毎 地震月報+別冊5号 電計作業開始
1962-1964  
1965 電計 験測基準変更59型全振幅1mm以上
1966  
1967 HITAC5020F 和達・鷺坂らに内挿 10km毎 67型地震計展開開始
1968-1969  
1970 67型:盛岡,宮古,大船渡,秋田,山形,酒田(3月)
1971 67型:青森・八戸・石巻・白河・小名浜(6/1)
1972 電計  
1973 市川・望月  
1974 地震月報  
1975 67型:本荘(4/1)
1976 76型地震計展開開始
1977  
1978 LL走時追加 +EMT式(深さ60kmまで) 76型:青森2,大船渡2,山形2(8/15)
1979  
1980  
1981  
1982 地震伝送網+L/A東京南部1月   東京北部7月    札幌・仙台10月 験測基準変更(2月)59型全振幅3mm(61型6mm)以上 L/A:L-Adess
1983 L/A大阪10月 83A+LL(10月) 0.1分 1km毎(LL除く) EMT式の定数、76型だけ変更 走時表以外すべて1月以降
1984 L/A福岡8月  
1985 0.1km毎と1km毎  
1986 宮古1000倍→3000倍(8/11)
1987 L/A沖縄3月 EPOS東京9月 東京、他機関データ導入
1988 88型地震計展開開始
1989  
1990 ETOS仙台3月  
1991 ETOS札幌3月 八戸->八戸2(5/18)
1992 ETOS福岡3月 LL1km毎 盛岡->盛岡2(3/19)
1993 ETOS大阪3月  
1994 ETOS沖縄3月 T-sys沖縄4月 仙台4-9/21 福岡9/28 大阪10/14 地震月報簡略化      地震年報CD開始 津波地震早期検知網(T-sys) 仙台:大船渡,山形,酒田,石巻,本荘,青森2,大船戸2,山形2を停止(11/1)
1995 T-sys札幌1/10 EPOS2東京4月(データ1/100秒化) 0.01秒 0.01分 0.01km毎と1km毎 震源フォーマット変更    80->96バイト(遡る)   観測点数記入 東京:津波地震早期検知網(4月) 仙台:3月トリガー変更
1996 札幌:1月稚内恵北、10月平取を移設  沖縄:3/26玉城移設
1997 10月全国一元化(管区データ1/100秒化) 12/11OBS室戸1、室戸2接続 10月以降、沖縄だけ0.1秒 10月以降、沖縄だけ0.1分 一元化以降EMT式を深さ90kmまで拡張、他機関振幅採用 10月札幌管区で低周波地震識別開始 札幌:12月上川を移設      沖縄:5/28-8/24波照間島、多良間島フィルター使用、験測再検討開始 12月トリガー変更
1998 11/5近畿・東海Hi-net接続 札幌:2月八雲、知内を移設 福岡:6/1串間本城休止
1999 3/1沖縄SIDEで1/100秒化 深さ700kmまで 全国0.01秒(3/1) 全国0.01分(3/1) 10月LL千島列島地域深さ30km固定 低周波地震:全国で開始(9月) 札幌:3月、根室88->根室豊里、日高->十勝ダム、  大阪:1/22南近畿Hi-net設定変更、2/11-3/2トリガー変更、10/30土居トリガー  福岡:11/19熊本御船開始  沖縄:3/18与那国島久部良移設
2000 8月釧路沖OBS接続 10月大阪・福岡Hi-net接続 11月大阪:大学17点追加 低周波地震:現業処理開始(6月) 札幌:3月北見88->常呂、11月奥尻移設   大阪:2/29舞鶴2廃止  福岡:3/2串間奈留開始、3/28熊本御船廃止。  沖縄:6/23西表島、波照間島の88型更新。6/30粟国島、宮古島城辺、竹富町黒島を開始。
2001 5,6月大阪:北近畿Hi-net 10月札幌・仙台Hi-net接続 10月:JMA2001モデル開始、三陸沖LL廃止、距離ウエイト変更 5月変位M6秒フィルター導入 5月:仙台トリガーにフィルター導入     10月:波形データ32bit化、M5以上は全国で験測、
(2002/5/10版)

追加
1997/10/01 札幌管区で低周波地震のフラグ開始
1999/10/01 全管区で低周波地震のフラグ開始
2002/10/01 東京管区のHi-net観測点を震源計算に使用開始
2003/03/03 トリガーパラメータ変更により震源決定総数が減少(検知能力に変更なし)
2003/05/01 振幅値の分解能の向上
2003/09/25 Mを1923年に遡って再計算実施。ただし全部ではないので注意。

2016/04/01 震源計算に自動処理を導入、フラグ「A」。
2019/03/15 1922年に遡って震源計算実施。
2020/01/15 1919年に遡って震源計算実施。
2020/09/01 S-netデータを震源計算に導入。新しい走時表と観測点標高を震源計算に導入。  参考ページ
参考文献:石川有三,2021,日本海溝改訂地震津波観測網(S-net)による震源データへの影響,地震ジャーナル,No.72,34-38.


気象庁地震観測網と処理システムの変遷

 気象庁の地震観測網と処理システムは何度も更新、強化が行われており、検知能力も変遷していることが知られている(石川,1987、気象庁,1990)。しかし、気象庁以外では余り知られていないのでここに少し簡略化しまとめて表にして紹介する。この調査資料は、笹川巌、内藤宏人、前田憲二、小池二郎、石垣祐三、横山博文、高嶋鉄也、関田康雄、岸尾政弘、中村雅基、上野寛の各氏の協力でまとめられた。この表は、東京管区(栃木県・群馬県・新潟県から福井県・岐阜県・三重県まで)についてはまだ不十分であり、利用する際は注意して頂きたい。
 概略を述べると、気象庁震源というものは1926年以降である(一部1923年関東地震頃からの資料があり、震源計算処理も行われており近い将来少し過去へ遡れる)。1884年以前は、理科年表(2001年版)の被害地震の表を入力し、1885年から1925年は、宇津(1982,1986)に基づいている。1926年から1960年までは、その後再計算され出版された地震月報別冊6号(1982)による。ただ、「別冊6号」は最新の結果ではあるが、必ずしも正しい震源位置を与えているとは限らないようである。例えば 1930年12月20日の広島県北部の地震の震央は明らかに震度分布から推定される震源域からはずれている。この他にも、この号のいくつかの地震の震源位置について疑問等が寄せられている。これは、電子計算機を使ってはいるものの現在と比べれば質的にも量的にも不十分なデータがもとであり、数値的に得られた最適な震源が必ずしも正しい震源位置を与えていない可能性は多々あると推定される。事実、このカタログの前書には同趣旨の事が書かれてあり、カタログ中の震源データについてもM6.5以上程度の浅い主な地震についてはそれ以前に使われていた地震の震源データを併記してある。この併記された震源データは、注釈欄に「C」、「D」(前書きには書かれていないが「W」も1個ある)と記されているので、このカタログを利用する際は必ず新旧どちらかの震源データを削除して利用しないといけない。しかし、こういう問題点はあるにしろデータ全体を同じ方法で一律に扱って作られたカタログはそれなりの意味があり、先に述べた問題点がその価値を低めるものではない。なお、1999年から地震年報ファイルには、「C」、「D」、「W」のイベントは削除され再計算震源だけになっている。
 1961年以降は地震月報出版当時の震源パラメータが記載されている。従って1961年から1966年までは震源深さの刻みがそれ以前より荒く、浅いところでも20km刻みになっている。その後、67型地震計、76型地震計(共に開発年が名称に取り入れられた)と高感度地震計の展開で検知能力が徐々に向上してきた。しかし、観測点の展開が数年に渡って行われているので改善も空間的、時間的に変化している。その後は、テレメータ・処理システムが管区単位で更新されており、その度にその関係する地域で検知能力の向上がはかられている。従って、更新時期の前後で決定されている震源数が減ったり、急増したりしている場合は自然の変化を反映していない可能性が高いので地震活動変化の研究では注意して欲しい。1997年10月からは、大学、科技庁(現文科省)、防災科技研、JAMSTECなどから地震観測データを気象庁へ集中・処理する一元化が始まり、地震検知能力は大幅に向上した。しかし、膨大なデータを効率的に処理するため、検測する(P,S相などの到着時、振幅などを読みとる)観測点数が震源決定に必要最小限となるように観測点の配置を考慮して制限した。しかし、広域の速度構造調査のため2001年10月からM5以上のイベントについては全国の観測点で検測を行っている。
 なお、震源決定法で大きな変更があったのは、1973年に市川・望月(1971)の採用、1978年にLL走時(市川,1978)の導入、1983年10月には「市川・望月」が「83A」に改訂され(浜田,1984)、今年10月に「JMA2001」に再度改訂された(上野ほか,2001)。震源決定法も、1983年10月(浜田ほか,1983)と今年10月(上野ほか,2001)に変更された。震源深度については、1983年10月から水平位置と同時に求める手法が用いられており、結果は1985年から0.1km単位で示されている。しかし震源計算処理の際に、深さの誤差が5km以上になると震源決定手法を変更して、深さ1km毎で水平位置と震源時間を求める計算が行われ、水平誤差が最小の深さを解として採用している。いずれにしても水平誤差が5分以上のイベントは、原則的には採用されない。走時表、震源決定作業ともLL走時採用地域である図1の「L2」、「L3」、「L4」地域は例外的作業が行われている。Mについては、今年4月に1994年10月から今年3月の芸予地震までの17イベントだけ改訂されたが、近い将来新しいM決定法が導入される予定である。
 より詳しい資料は、現在気象庁地震予知情報課でまとめられているので近い将来公開されるはずであり、そちらも参考にしていただきたい。なお、観測履歴、観測網検知能力関係、走時表、Mなどに関する文献リストを参考のため下記に列記した。(2002年執筆)

LL走時:三陸はるか沖地域と北海道東方沖から千島海溝付近のの震源を決定するための特別の走時表(市川,1978)
L/A=L-Adess : Local Automated Data Editing and Switching System
EPOS : Earthquake Phenomena Observation System 東京のみ
ETOS : Earthquake and Tsunami Observation System 各地の管区気象台
SIDE : Seismological Information and Data Exchanger 地震資料交換装置
宇津徳治,1982,日本付近のM6.0 以上の地震および被害地震の表:1885〜1980年,地震研究所彙報,57,401-463.
宇津徳治,1986,(訂正と追加),地震研究所彙報,60,639-642.


(作図:中村浩二さん)