気象要覧の記載:信州上田町の地震(現在の上田市)



1912年 明治45年 8月号

前者は17日に頗ぶる著明なる地震を発し其後引続き余震頻繁にして本月末日までに17回を観測せり就中22日午後0時36分に現われたる余震は震域稍々広く長径30里短径20里を有し総面積380方里に達し又23日午前5時48分に発したるものは長野地方に達せしが其外のものは一小局部に限られたり。今余震回数を日割して表示すれば次の如し


1.信州上田町の地震
 此地震は17日午後11時22分に発し、震域は狭隘にして全体としては小なる地震なりき。乃ち長径100里短径50里にして総面積3180方里に過ぎず、其中強震部は信濃国小縣郡全部北佐久、埴科、上高井、諸郡の一部分と上野国吾妻郡の南西部を含み面積100方里なり。震央地附近に当れる上田町に於ては地盤の亀裂3箇所、土塀並びに石垣の崩壊6箇所、石碑の移動等ありて、震動は甚激烈なりき。長野測候所の観測に拠れば発震は午後11時21分42秒にして、急激なる震動に起り、初期微動1秒時間を経て主要動に移り6秒時に至りて最大水平動を顕出し南15度東の方向に於て全振幅1.1粍を示したり。爾後17秒時間は震動稍々著明なりしが、漸次に微弱となり全振動時間1分25秒にして静止せり。又松本測候所の観測に拠れば発震は午後11次23分22秒にして最初より急性なる震動に始まり水平動は1秒時に至りて主要動に達し、発震後4秒時間を経て最大振動を現わし、北東南西の方向を以て全振幅0.6粍、振動期0.9秒を示し午後12秒時間は震動尚お著しく、上下動は発震後2秒時間を経て主要に移り夫より1秒時間を経て最大動に達し全振幅0.1粍、振動期0.6秒を示し爾後2秒時間は著明なりき総震動時間は水平動は1分33秒間上下動は45秒間継続せり。

(注記:ここで使われている「発震」は、震動がそこへ到着した時刻で現在の「着震時」を意味します)

参考文献
気象要覧1912年 明治45年 8月号:気、気研、松代

文献最後の項は、どこに所蔵されているかを示しています。
地台:長野地方気象台
セ:松代地震センター(TEL 026-278-2825)
松代:気象庁精密地震観測室(TEL 026-278-2235)
気:気象庁図書
軽:軽井沢測候所
気研:気象研究所

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